1、不在者の財産管理人とは?
不在者の財産管理人とは、行方不明である不在者本人に代わり、
不在者の財産を管理する人です。
たとえば、不在者が相続人の一人である場合、不在者に代わって
遺産分割協議に参加します。
2、不在者の財産管理人の選任方法
不在者の最後の住所を管轄する家庭裁判所に申し立てをします。
不在者の最後の住所が不明の場合は、相続財産がある場所を管轄する
家庭裁判所に申し立てをします。
申し立てをするケースで最も多いのは、相続が開始したが、相続人のうち
一人が行方不明の場合です。
申し立てにかかる実費は、大津家庭裁判所の場合、収入印紙800円、
予納郵券2,765円です。
予納郵券とは、裁判所が郵送に使う切手を、裁判所が指定した種類の切手で
申立時に裁判所に納めるものです。
上記のほか、予納金 (裁判所に納める額) 30~50万円が必要です。
ただし、予納金については、不在者が相続によって財産を取得した場合は、
不在者の財産から捻出しますので、予納金は返還されることもあります。
3、不在者の財産管理人には誰がなるのか?
不在者の財産管理人は、通常、申立時に候補者を指定します。
不動産の相続などに伴う不在者の財産管理人には、不動産登記の専門家で
ある司法書士が選任されることが多いです。
4、不在者の財産管理人の仕事
選任されたら、まずは、不在者の所在調査と、不在者の財産調査をしま
す。相続手続きについては、裁判所の許可を得て、遺産分割協議に参加し、
不在者については、法定相続分を取得する内容で解決を図ります。
①不在者が帰還する可能性が極めて低い、②不在者に子どもがいない、
③相続によって取得する財産が少額である場合には
「帰来時弁済」といって、不動産を取得した相続人が、不在者が
帰還した場合に限り、代償金を支払う内容の遺産分割協議を成立させる
こともあります。
5、不在者の財産管理人選任時の予納金を準備する方法
相続法改正により2019年7月から、遺産分割協議成立前であっても、
相続財産である預貯金の一部を単独で出金できるようになりました。
葬儀費用や医療費を支払うことができるようにするためです。
例)相続人が2人。相続財産である預金が300万円ある場合
50万円は他の相続人の協力がなくても出金できることになりました。
以前は予納金が高いため、手続きを断念せざるを得ないケースも多々
ありましたが、今は、この制度を利用することにより、予納金を準備して
申立ができるようになりましたので、相続人に不在者がいる場合でも
財産管理人制度を活用して、相続手続きを進めることが可能になりました。
司法書士大津法務コンサルティング
代表・司法書士 横田 聡